解説

文字起こしと個人情報:録音データをクラウドで処理する前に確認したいこと

文字起こしと個人情報の関係で押さえたいのは、録音には名前や発言内容だけでなく声そのものも含まれ、特定の人を識別できれば個人情報として扱う必要がある、という点です。mydubly では動画ファイルはブラウザの中に残り、音声だけが送信され、処理が終わってから30分以内にサーバーから削除されます。この記事では、社内で確認したい項目と、データを減らす工夫を一般的な情報として整理します。

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ご注意:mydubly の操作画面は現在英語のみです。日本語音声の文字起こし、日本語への翻訳、日本語音声の生成には対応しています(ボタンの表記が英語になります)。

録音データが個人情報になりうる理由

会議やインタビューの録音を文字起こしサービスに渡すとき、「音声ファイルを送るだけだから大丈夫」と考えがちです。しかし録音には、思っている以上に多くの個人に関する情報が含まれています。

  • 冒頭の自己紹介や呼びかけで出てくる氏名、会社名、役職。
  • 話の中で触れられる住所、電話番号、取引先の担当者名。
  • 本人の体調、家族の事情、評価や処遇など、話の内容そのもの。
  • 声そのもの。知っている人が聞けば、誰の声かがわかります。

個人情報保護法では、一般に、生存する個人に関する情報で特定の個人を識別できるものを個人情報としています。録音も、話している人が誰かわかる状態であれば、個人情報として扱うのが自然だと考えられています。なお、個人が私的なメモとして録音を使う場合と、会社が業務として顧客や社員の録音を扱う場合とでは、求められることが大きく違います。この記事では主に後者を想定しています。

この記事は一般的な情報の整理であり、法的な助言ではありません。具体的な判断は、社内の法務や個人情報保護の担当者、必要に応じて専門家に相談してください。

特に慎重に扱いたい録音

同じ録音でも、内容によって扱いの重さが変わります。次のような録音は、文字起こしに回す前に一段と慎重な確認が必要です。

  • 人事面談、評価面談、ハラスメントの相談など、社員の処遇やプライバシーに深く関わる録音。
  • 医療、介護、福祉の現場での相談や聞き取り。病歴などは、個人情報保護法で「要配慮個人情報」として、取得に原則として本人の同意が必要な情報とされています。
  • 採用面接の録音。応募者は社員ではないため、録音や利用目的の説明がより重要になります。
  • コールセンターや相談窓口の通話録音。顧客の連絡先や契約内容が含まれることが多くあります。
  • 子どもが話している録音。保護者への説明や同意の扱いを確認します。

こうした録音は、そもそも外部のサービスで処理してよいかどうかを、社内のルールで先に決めておくべきです。インタビュー録音の扱い方全般はインタビューの文字起こしのやり方でも触れています。

文字起こしサービスに録音を渡すときの一般的な論点

会社として録音を外部のサービスで処理する場合に、一般的に検討される論点を挙げます。個人情報保護委員会がガイドラインや Q&A を公開しているので、詳細はそちらで確認できます。

  • 利用目的:録音を何のために使うのかを特定し、本人に通知または公表しているか。議事録作成のために録った録音を、別の目的に使い回していないか。
  • 本人への説明と同意:録音すること、文字起こしすることを参加者に伝えているか。要配慮個人情報を含む場合は、同意の取り方を特に確認します。
  • 委託先の管理:外部のサービスに個人データの取扱いを任せる場合、委託先を適切に監督することが求められます。どのような安全管理をしているかを確認するのが一般的です。
  • 外国の事業者の場合:外国にある事業者に個人データを渡す場合には、別のルールが関わることがあります。サービスの運営者や処理の場所がどこかを確認しましょう。
  • 保存期間と削除:録音と文字起こしの結果をいつまで、どこに保存し、いつ消すのかを決めているか。

どれも、サービスを選ぶ前に社内の法務、情報システム部門、個人情報保護の担当者と確認しておきたい項目です。

mydublyでは録音データがどう扱われるか

mydubly はブラウザで動くウェブアプリで、データの流れは次のようになっています。

動画ファイル
ブラウザの中に残り、サーバーには送られない
音声
ブラウザが動画から取り出し、HTTPS で送信する
音声と処理結果
ジョブ終了後30分以内にサーバーから削除される
翻訳した動画
ブラウザの中で組み立てられる
処理中のタブ
閉じるとジョブはキャンセルされる

たとえば社内会議を撮った動画を文字起こしする場合、画面に映った資料や参加者の顔が映った映像はサーバーに送られず、文字起こしに必要な音声だけが送信されます。音声ファイル(MP3、M4A など)を読み込んだ場合は、その音声が送信されます。仕組みの詳しい説明はプライベートな動画翻訳 (英語)のページにあります。

一方で、できないことや、この記事で保証できないこともはっきりさせておきます。音声だけを送るといっても、音声には話された内容も声もすべて含まれているので、匿名化されるわけではありません。名前を伏せ字にしたり、声を加工したりする機能はありません。音声認識はサーバー側で行うため、インターネットにつながずにパソコンの中だけで処理するモードもありません。チームでの権限管理の機能もありません。また、mydubly が特定の法令や認証の要件を満たしていると表明するものではありません。サーバーの所在地など、社内規程で確認が必要な項目がほかにあれば、公開されている情報を確認するか、社内の担当部署と相談したうえで判断してください。

社内規程で確認したいチェックリスト

外部の文字起こしサービスを使ってよいかどうかは、多くの会社で情報セキュリティの規程やクラウドサービスの利用ルールに定められています。使い始める前に、次の点を確認しておくと後で困りません。

  1. 外部のクラウドサービスを業務で使うときに、申請や承認が必要か。
  2. その録音は、社内のデータ分類でどの区分に当たるか(社外秘、機密など)。区分によっては外部サービスでの処理自体が禁止されていることがあります。
  3. 録音について参加者から同意を得ているか。社外の人が参加する会議では特に重要です。
  4. ダウンロードした文字起こしのテキストを、どこに保存し、誰が見られるようにするか。
  5. 録音と文字起こしの結果を、いつ削除するか。
  6. 誤って共有してしまった場合などに、どこへ連絡するか。

議事録作成のための録音なら、議事録の文字起こしの記事で紹介している運用と合わせて、規程に沿った手順を作っておくと安心です。

アップロードの前後にできるデータを減らす工夫

個人情報の扱いの基本は、必要な分だけを扱うことです。文字起こしでも、ちょっとした工夫で外に出す情報と手元に残る情報を減らせます。

  • 会議の前後の雑談や、議題と関係のない部分は、音声編集ソフトで切り取ってから読み込みます。
  • 出席確認で全員の氏名を読み上げる部分など、文字にする必要のない部分も切り取れます。
  • 動画全体が必要ない場合は、必要な部分の音声だけを書き出して読み込みます。
  • ダウンロードしたテキストは、共有する前に氏名を記号に置き換える「仮名化」を行います。
  • 作業が終わったら、手元の録音、テキスト、字幕ファイルを規程に従って削除します。メールやチャットに文字起こしを貼り付けて広く回すのは避けましょう。
仮名化の例
元のテキスト:山田さんの評価については、佐藤部長から来月の面談で伝えてもらいます
仮名化後:Aさんの評価については、B部長から来月の面談で伝えてもらいます
※対応表(A=山田、B=佐藤)は別のファイルにして、アクセスできる人を限定します

仮名化しても、話の内容から誰のことかわかってしまう場合があります。役職や部署、具体的な出来事の組み合わせで個人が推測できないかも、共有する前に確認してください。

研究や取材で録音を扱う場合

大学の研究や報道の取材では、会社の規程とは別のルールが関わります。研究では、倫理審査で承認された計画書や同意書の内容が、録音をどこで処理してよいかを決める基準になります。同意書に「外部のサービスで文字起こしを行う」と書かれていない場合は、事前に指導教員や倫理審査の窓口に確認しましょう。

取材では、取材相手との約束が最優先です。オフレコの部分や、身元を明かさない約束をした相手の録音は、外部のサービスに渡す前に扱いを慎重に検討してください。研究での AI 文字起こしの倫理についてはAI 文字起こしと研究倫理 (英語)、クラウドでの音声処理のプライバシーについてはクラウド音声処理のプライバシー (英語)でも詳しく解説しています。

よくある質問

録音データは個人情報に当たりますか?

話している人が誰か特定できる録音は、一般に個人情報として扱うべきものと考えられています。氏名が出てこなくても、声や話の内容から個人がわかる場合があります。具体的な判断は、社内の担当者や専門家に確認してください。

mydublyに動画をアップロードすると、映像もサーバーに送られますか?

送られません。動画ファイルはブラウザの中に残り、ブラウザが取り出した音声だけが HTTPS で送信されます。翻訳した動画も、ブラウザの中で組み立てられます。

送信した音声はいつ削除されますか?

音声と処理結果は、ジョブが終わってから30分以内にサーバーから削除されます。ダウンロードしたファイルは手元に残るので、社内の規程に従って保存や削除をしてください。

mydublyは個人情報保護法に対応していると言えますか?

mydubly が特定の法令や認証の要件を満たしていると表明するものではありません。この記事で紹介した動画をブラウザに残す仕組みや30分以内の削除といった事実をもとに、社内の法務や個人情報保護の担当者と相談して判断してください。

名前や個人情報を自動で伏せ字にできますか?

できません。mydubly には伏せ字や匿名化の機能はありません。録音から不要な部分を切り取ってから読み込むことと、ダウンロードしたテキストを共有前に手作業で仮名化することを組み合わせてください。

インターネットにつながずに文字起こしできますか?

mydubly ではできません。音声認識はサーバー側で行うため、音声の送信が必要です。録音を一切外に出せない場合は、Whisper を自分のパソコンで動かすなど、手元で完結する方法を社内で検討してください。

人事面談の録音を文字起こししても大丈夫ですか?

人事面談の録音は、社員の処遇やプライバシーに深く関わる情報を含むため、外部サービスで処理してよいかを社内規程で先に確認してください。面談の相手への説明や同意、文字起こし結果の保存場所と閲覧できる人の範囲も決めておく必要があります。