活用例

インバウンド向けの動画多言語化:観光・小売・自治体のための進め方

インバウンド向けの動画多言語化は、来訪者のデータから言語の優先順位を決め、見る場所に合わせて字幕か吹き替えかを選び、現地の言葉がわかる人の確認を経て公開する、という流れで進めると失敗が少なくなります。この記事では、観光施設・小売店・自治体が少人数でも回せる手順を、具体的な場面とともに紹介します。

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ご注意:mydubly の操作画面は現在英語のみです。日本語音声の文字起こし、日本語への翻訳、日本語音声の生成には対応しています(ボタンの表記が英語になります)。

なぜ観光・小売・自治体で動画の多言語化が必要なのか

訪日客や外国籍の住民が増えるにつれ、窓口や店頭で同じ説明を何度も繰り返す負担が大きくなっています。温泉の入り方、神社での参拝の作法、免税手続きの流れ、ごみの分別、防災情報など、繰り返し伝える内容ほど動画にまとめておく効果が高い分野です。

すでに日本語で作った動画があるなら、ゼロから外国語版を撮り直すより、既存の動画を多言語化するほうがはるかに手軽です。日本語版の撮影で使った映像はそのまま活かし、声や字幕だけを差し替えればよいからです。

まずは言語の優先順位を決める

「英語・中国語・韓国語の3言語」は定番ですが、すべての施設にとって正解とは限りません。優先順位は、手元にある自分たちのデータで決めるのが確実です。

  • 宿泊施設なら、宿泊者名簿や予約サイトの国・地域別の傾向。
  • 小売店なら、免税販売の記録や、店頭でよく受ける質問の言語。
  • 自治体なら、外国籍住民の国籍別の登録状況や、窓口での通訳依頼の記録。
  • 観光協会なら、案内所での問い合わせや、多言語パンフレットの減り方。

英語は、英語圏以外の来訪者にとっても共通語として機能しやすいため、最初の1言語として選ばれることが多い言語です。言語選びの考え方は翻訳先の言語の選び方 (英語)でも詳しく扱っています。

注意したいのは、需要がある言語でもツールが対応していない場合があることです。たとえば mydubly はタイ語やインドネシア語、ウクライナ語などには対応していません。その言語が必要な場合は、翻訳会社や現地出身の協力者に依頼する方法を並行して検討してください。

字幕と吹き替えは「見る場所」で使い分ける

字幕と吹き替えのどちらが優れているかではなく、その動画がどこで、どんな状態で見られるかで選びます。

館内のデジタルサイネージ
音を出せない場所が多いため字幕向き。遠くからも読める大きさに
SNS の縦型動画
音を消して再生されることが多く、字幕が基本
体験アクティビティの安全説明
参加者が手元の道具を見ながら聞くので、音声の吹き替えが伝わりやすい
自治体のごみ分別・防災動画
文字が読みにくい人もいるため、字幕と音声の両方を用意すると安心
店頭での商品紹介
周囲の騒音で音声が聞こえにくい売り場では字幕を優先

両者の違いをもっと詳しく知りたい方は字幕と吹き替えの比較 (英語)を参考にしてください。

多言語化しやすい元の動画をつくるコツ

これから日本語版を撮る、あるいは作り直すなら、多言語化を前提にした作り方をしておくと後の作業が大きく減ります。

  • 大事な情報は「話す」。画面の日本語テロップだけで伝えている情報は、音声の翻訳では拾われません。
  • ダジャレや地元の言い回しは控えめに。訳しても意味が通じないことが多く、確認の手間が増えます。
  • 地名や料理名は一度はっきり発音する。音声認識が固有名詞を正しく拾えるかどうかが、訳の質を左右します。
  • 料金や営業時間など変わりやすい情報は、動画の中で言わずに概要欄や掲示に回す。改定のたびに全言語を作り直さずに済みます。

画面上の文字の扱いについては動画内のテロップの翻訳 (英語)で考え方を整理しています。

mydubly で多言語版を作る流れと、できないこと

mydubly はブラウザで使う動画翻訳アプリで、日本語の動画から英語・中国語・韓国語などの字幕や音声を作れます。画面は英語ですが、1言語につき次の操作を繰り返すだけです。

  1. 「Drop a video here」に日本語の動画をドロップします。
  2. 字幕だけなら「Full translation output」をオフにして「Select language」で English、Chinese、Korean のいずれかを選び、「Transcribe video」を押して「Download subtitles」で SRT を保存します。
  3. 音声も差し替えるなら「Full translation output」をオンにし、「Select language」で言語、「Select voice」で8種類のボイスから声を選んで「Translate video」を押し、「Download translated video」で保存します。
  4. 言語ごとにこれを繰り返します。1回の処理で作れるのは1言語です。
3分の施設紹介動画を3言語にする場合の費用

字幕のみ:1ファイルの最低料金 5 クレジット × 3言語 = 15 クレジット。吹き替え:1分50クレジット × 3分 = 150 クレジットを3言語で 450 クレジット($0.45)。登録時の無料 100 クレジットで字幕版は十分試せます。吹き替えは3分の動画だと1言語でも150クレジットかかるため無料分では足りず、無料分で試せるのは2分以内の動画1本ぶんです。

できないことも把握しておきましょう。画面の日本語テロップや看板の文字は翻訳されません。字幕を映像に焼き付ける機能もないので、サイネージ用に字幕入りの動画が必要な場合は、編集ソフトで SRT を読み込んで書き出します。中国語は地域別の選択肢がないため、台湾や香港からの来訪者が多い施設では、出力された字幕の字体や言い回しをネイティブの方に確認してもらうと安心です。URL からの読み込みにも対応していないので、元の動画ファイルを手元に用意してください。多言語化の全体像は動画ローカライズのページ (英語)にまとめています。

少人数でも回せる確認体制をつくる

自動翻訳を使っても、公開前の確認は欠かせません。特に自治体の防災情報や医療に関わる案内など、誤訳が人の安全に関わる内容は、翻訳の専門家のチェックを受けることを強くおすすめします。公共情報の翻訳については公共案内動画の翻訳 (英語)も参考になります。

それ以外の観光案内や店頭動画では、次のような身近な協力者に頼む方法が現実的です。

  • 外国籍のスタッフやアルバイトに、母語の字幕を一度見てもらう。
  • 地域の国際交流協会や、近くの大学の留学生に協力をお願いする。
  • 全編ではなく、料金・時間・禁止事項など「間違えると困る箇所」だけを翻訳会社に確認してもらう。

確認を頼むときは、SRT ファイルと一緒に「この動画は誰に、何を伝えたいのか」を一言添えると、的確な指摘をもらいやすくなります。

公開した後の運用と更新

多言語版は作って終わりではありません。置き場所と更新の段取りまで決めておくと、長く使える資産になります。

  • YouTube に置く場合は、日本語の動画に言語別の字幕を追加する方法と、言語ごとに別の動画を上げる方法があります。字幕の登録手順はYouTube の字幕翻訳の記事で解説しています。
  • 館内では、ポスターや客室の案内に QR コードを置き、言語別の動画に直接つなげると探す手間が省けます。
  • 季節のイベントや料金改定があったら、日本語版を直すタイミングで全言語の更新もまとめて行うよう、担当者の作業手順に組み込みます。

よくある質問

動画の多言語化は何語から始めればいいですか?

宿泊者の国籍や免税販売の記録、窓口での問い合わせなど、自分たちが持っているデータで決めるのが確実です。迷った場合は、英語圏以外の人にも通じやすい英語から始め、来訪者の多い言語を順に追加していく方法がよく取られます。

中国語の字幕は簡体字と繁体字を選べますか?

mydubly の中国語は地域別の選択肢がなく、簡体字・繁体字を指定することはできません。台湾や香港からの来訪者が主な対象の場合は、出力された字幕をその地域出身の方に確認してもらい、必要に応じて字体や言い回しを直してください。

タイ語やインドネシア語にも多言語化できますか?

mydubly はタイ語やインドネシア語には対応していません。対応しているのは日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、フランス語など21言語です。対応外の言語が必要な場合は、翻訳会社や現地出身の協力者への依頼を検討してください。

予算が少ない自治体でも動画を多言語化できますか?

字幕だけなら費用はかなり抑えられます。mydubly の場合、字幕作成は1分1クレジットで、60分の動画でも 60 クレジット($0.06)です。費用の多くを占めるのはむしろ確認作業なので、防災や医療など重要な情報に確認の予算を集中させるのが現実的です。

サイネージ用に字幕を焼き付けた動画を作れますか?

mydubly には字幕を焼き付ける機能はありません。ダウンロードした SRT を DaVinci Resolve や Premiere Pro などの編集ソフトに読み込み、文字の大きさや位置を整えてから書き出してください。サイネージでは遠くからも読めるよう、通常より大きめの文字にするのがおすすめです。

画面の日本語テロップも翻訳されますか?

mydubly が翻訳するのは話されている音声だけで、画面上の文字は対象外です。テロップで伝えている大事な情報は、ナレーションでも話すように作り直すか、編集ソフトで外国語のテロップを重ねる必要があります。