字幕の文字数は法律ではなく「慣例」で決まっている
最初に押さえておきたいのは、日本語字幕の文字数に、法律や公的な規格で決まった統一ルールはないということです。実際に使われているのは、映画の字幕翻訳の現場で長年培われてきた慣例と、配信事業者や放送局、制作会社がそれぞれ定めている納品基準です。
そのため「正しい文字数」は、字幕を出す場所によって変わります。劇場公開や動画配信サービスに納品する字幕なら、納品先の基準が絶対です。自社の YouTube チャンネルや社内研修の動画なら、決まりはありませんが、慣例に沿った字幕のほうが視聴者にとって読みやすいのは確かです。以下で紹介する数字は、こうした場面で迷ったときの出発点として使ってください。
「1秒4文字」という目安とその出典
日本語字幕でもっとも有名な目安が「1秒あたり4文字」です。人が画面の映像を見ながら無理なく読める量はこのくらい、という考え方で、日本の映画字幕翻訳の世界で古くから使われてきました。字幕翻訳者が書いた入門書や、字幕翻訳の講座でも、まず教わる基本として扱われています。
公開されている文書としては、Netflix が字幕制作者向けに公開している日本語の字幕スタイルガイド(Japanese Timed Text Style Guide)があります。このガイドでも、読む速さの上限として1秒4文字という目安が示されています。スタイルガイドは改訂されることがあるため、仕事で使う場合は必ず最新版を確認してください。
英語の字幕にも1秒あたりの文字数(CPS)の基準がありますが、アルファベットと違って日本語は漢字1文字に多くの情報が詰まっているため、数字そのものは比べられません。英語の基準をそのまま当てはめないように注意しましょう。字幕の表示時間の考え方は字幕のタイミングのガイドライン (英語)でも解説しています。
1行の文字数・行数・記号の目安
読む速さとは別に、1枚の字幕に入れる文字の「形」にも目安があります。前述の Netflix の日本語ガイドでは、横書きの字幕は1行あたり全角13文字まで、行数は2行までとされています。映画やドラマの日本語字幕でよく見る、短い2行の字幕はこの基準に沿ったものです。
- 読む速さ
- 1秒あたり4文字まで
- 横書き1行の文字数
- 全角13文字まで
- 1枚あたりの行数
- 2行まで
- 句点「。」
- 打たないのが一般的
- 読点「、」
- 代わりにスペースで区切るのが一般的
句読点の扱いも日本語字幕の大きな特徴です。映画やドラマの字幕では、文末の「。」は打たず、文中の「、」の代わりにスペースを入れて区切る書き方が広く使われています。一方、ニュース番組や企業の説明動画では句読点を残すこともあり、ここも納品先や媒体によって考え方が分かれます。
半角の英数字をどう数えるか、縦書き字幕をどう扱うかといった細かい点も、基準によって違います。迷ったら、まず「誰に向けて、どこで流す字幕か」を決め、その媒体の基準に合わせるのが近道です。
表示時間から入れられる文字数を計算する
1秒4文字の目安を使うと、字幕1枚に入れられる文字数は「表示時間(秒)×4」で計算できます。SRT ファイルの時刻を見れば、表示時間はすぐにわかります。
00:01:05,200 --> 00:01:10,000 の字幕は表示時間が4.8秒なので、4.8×4=19.2、つまり19文字までが目安です。13文字を超える場合は2行に分けます。
自動生成した字幕は、話している言葉をそのまま文字にしているので、この目安を超えることがよくあります。特に早口の話し手や、間を置かずに話すプレゼンテーションでは、ほとんどの字幕が上限を超えていることも珍しくありません。その場合は、次の節で紹介する方法で文字数を減らします。
字幕の文字数を減らす書き方のコツ
字幕は話し言葉を一字一句写すものではなく、意味を短く伝えるものです。字幕翻訳の世界では、この作業を情報の取捨選択として重視しています。日本語の字幕で文字数を減らすときに使いやすい方法をまとめました。
- 主語や目的語は、映像や前後の流れでわかるなら省きます。「私はその件について」は「その件は」で十分なことが多いです。
- 丁寧すぎる語尾を短くします。「〜していただけますでしょうか」は「〜してください」に。
- 言いよどみ、繰り返し、「まあ」「なんか」などのつなぎ言葉は削ります。
- 同じ意味なら短い言葉を選びます。「〜することができます」は「〜できます」、「月曜日」は「月曜」に。
- 長いカタカナ語や正式名称は、2回目以降は略称にします。
元の発言:来週の月曜日までに資料を全部まとめてチームの共有フォルダーに入れておいてください(40文字) 字幕:月曜までに資料を 共有フォルダーへ(16文字・2行に分けて表示)
削りすぎると話し手の意図やニュアンスが消えてしまいます。冗談や強調など、映像だけでは伝わらない要素は優先して残しましょう。1枚の字幕をどこで区切るかについては字幕の分割の考え方 (英語)も参考になります。
mydublyの字幕ファイルの特徴と、ルールに合わせて整える手順
mydubly では、動画を読み込んで「Full translation output」をオフにし、「Select language」で話されている言語(翻訳なし)か翻訳先の言語を選んで「Transcribe video」を押すと字幕ファイルを作れます。「Download subtitles」で保存される subtitles.srt は、話の区切りごとに1枚、1行の字幕が入った SRT ファイルです。文字コードは BOM 付きの UTF-8 です。10分の動画なら10クレジット($0.01)で、詳しくは字幕作成ツール (英語)のページで確認できます。
ただし、mydubly には1行の文字数や1秒あたりの文字数を指定する設定はありません。話の区切りが長いと、1枚の字幕が1行13文字の目安を大きく超えることもあります。画面上で字幕を編集する機能もないので、ルールに合わせる作業はダウンロードしたファイルを手元で編集して行います。字幕を映像に焼き込む機能や、既存の字幕ファイルを読み込んで翻訳する機能もありません(字幕ファイルは SRT と VTT でダウンロードできます)。
整える手順は次のとおりです。
- subtitles.srt を Subtitle Edit や Aegisub などの字幕編集ソフト、またはテキストエディタで開きます。
- 各字幕の表示時間から上限の文字数を計算し、超えているものを探します。
- 13文字を超える字幕は、意味の切れ目で改行して2行にします。SRT では、1枚の字幕の中で改行すれば2行で表示されます。
- 2行にしても上限を超える場合は、前の節の方法で言葉を削るか、1枚の字幕を2枚に分けて時刻を振り直します。
- 保存するときは文字コードを UTF-8 のままにします。別の文字コードで保存すると、再生時に文字化けすることがあります。
12 00:01:05,200 --> 00:01:07,600 月曜までに資料を 13 00:01:07,600 --> 00:01:10,000 共有フォルダーへ
日本語に訳した字幕を作る場合も同じです。英語の動画で「Select language」に Japanese を選ぶと日本語の字幕が出力されますが、機械翻訳は字幕向けに文を短くまとめてはくれないので、文字数の調整は必須です。SRT ファイルの基本はSRT ファイルの作り方、編集の手順はSRT ファイルの編集方法 (英語)で詳しく説明しています。
公開前に確認したいチェックリスト
文字数を整えたら、最後に実際の映像と一緒に再生して確認します。数字の上では基準を満たしていても、映像と合わせると読みにくいことがあるからです。
- 字幕が表示される時間内に、自分で声に出さずに読み切れるか。
- 2行の字幕で、改行の位置が言葉の途中や助詞の前になっていないか。
- 場面が切り替わる瞬間をまたいで、字幕が残っていないか。
- 人名、社名、数字が正しいか。
- 文字化けがないか。古い再生環境で文字化けする場合は字幕ファイルの文字化けの対処法を確認してください。
よくある質問
字幕の文字数に決まったルールはありますか?
法律や公的な規格で決まった統一ルールはありません。映画字幕の慣例として1秒4文字、横書き1行13文字、2行までという目安が広く使われていて、配信事業者のスタイルガイドにも同様の数字があります。納品する場合は、納品先の基準が優先です。
1秒4文字はどう計算すればいいですか?
字幕の表示時間(秒)に4を掛けた数が、その字幕に入れられる文字数の目安です。表示時間が3秒なら12文字、4.8秒なら19文字までになります。
YouTubeの字幕にも文字数の制限はありますか?
YouTube 側で日本語字幕の文字数を制限しているわけではありません。ただ、視聴者が映像を見ながら読むことに変わりはないので、1秒4文字や1行13文字程度を目安にすると読みやすい字幕になります。
字幕に句読点は使わないのですか?
映画やドラマの日本語字幕では、句点を打たず、読点の代わりにスペースで区切る書き方が一般的です。ただしニュースや企業動画では句読点を残すこともあるので、媒体やチャンネルの方針で統一してください。
mydublyで文字数を指定して字幕を作れますか?
できません。mydubly の字幕は、話の区切りごとに1枚1行で出力され、文字数の上限を指定する設定はありません。ダウンロードした SRT ファイルを字幕編集ソフトなどで開き、改行や分割をして整えてください。
英語の字幕を日本語にすると長くなりすぎます。どうすればいいですか?
機械翻訳は文を字幕向けに短くしないため、日本語訳の字幕は文字数オーバーになりがちです。主語の省略、語尾の簡略化、言いよどみの削除などで短くし、それでも収まらなければ字幕を2枚に分けてください。
